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メインビジュアル制作インタビュー

今年のクリスマスマーケットのメインビジュアルですが、どのような想いがありますか?

一昨年、昨年に続き森の中のワンシーンを描いています。今年は「木の上で待つ人たち」と題した作品です。恐怖心の対象だったコロナに対して、少しずつ捉え方が変化してきました。国内外の人の往来も徐々に増え、ここ数年感じていた閉塞感とは違う感情が芽生えてきました。ただ嬉しいや楽しいという感情を抑えなければいけないような空気感はまだ残っているように感じます。絵に登場する人たちは、ずっと昔から木の上に登ってこちらの様子を見ていたのか、またこの状況下で木の上に登った人たちなのか、絵を見た人がそれぞれの思いを投影させることができるものになればと思って描きました。

2023年は田中さんにとって、どんな一年でしたか?

1月から福岡市美術館で開催された「地平線と道」の個展からスタートしました。と同時に美術館で描いた13mの壁画の現地制作を行いました。真っ白い巨大な壁面を目の当たりにして、エスキースが無意味に感じ、はじめは戸惑いましたが、黒い絵の具で画面が真っ黒になったところからうまくいくようになりました。最終的には、来年再来年と加筆していく余白を残しながら出来上がりました。
振り返ってみると、慌ただしい一年でした。昨年から、作家活動の計画を、他者に委ねるのではなく、自分に戻していくことを進めていきました。やりたいことを自分で考えて、実行していくことで、軸が自分に戻ってきて、意欲的に活動ができているという実感があります。

自分の作品が福岡の街の中にあることについてはどう感じますか?

書籍の装丁画や新聞の挿絵やクリスマーケットの看板など、多くの人の目に触れることで、なんとなくでも私の作品を「どこかで見たことある絵」と記憶してもらえていることがあります。たまに、展覧会の会場や、壁画の制作現場、直接会った時に、「この絵を見たことあります」ということを目をキラっとさせて伝えてくれる時は、私もとても嬉しくなります。

クリスマスの思い出などありますか?

クリスマスの思い出は、6年前に個展でフランスに行った時のことです。その日のパリは、雪もパラパラ降って寒かったのです。長男を抱っこ紐で抱えながら、公園で売っていたホットワインを飲みました。頬は冷たかったのですが、胃の中に熱い液体が入り、身体が芯からポカポカ温かくなってきました。街中のイルミネーションを見ながら家族でほっこりしました。

近々、個展や展覧会の予定はありますか?

来年の1月に、福岡市美術館の壁画の現地制作を行います。昨年描いた壁画に加筆するのですが、現時点ではあまり具体的なプランはまだ出てきていません。ただ来年は、私自身の暮らしも大きく変化していく計画なので、そのあたりも作品にも影響を及ぼすのではないかと思っています。ぜひ福岡市美術館に覗きに来てください。


田中 千智
1980年兵庫県生まれ、福岡県糸島市出身。中学生の頃から油絵を描き始める。1998年九州産業大学付属九州高校デザイン科卒業。2005年多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業。2006年より福岡を拠点に画家として制作活動を開始。近年は国内で多数の展覧会を開催するほか、韓国・シンガポール・台湾・英国など海外での展覧会にも出品多数。その他、書籍の装丁画など幅広い活動を行っている。
代表的な展覧会として、2014年「第5回福岡アジア美術トリエンナーレ」福岡アジア美術館(福岡)、2016年「I am a painter」横浜市民ギャラリー(横浜)、2021年「九州洋画II:大地の力-BlackSpirytus」久留米市美術館(福岡)、2022年「1000のキャンバス」Bunkamura Gallery(東京)。2023年「地平線と道」福岡市美術館(福岡)など。

information
[生きている壁画/現地制作]
2024年1月5日〜1月27日
@福岡市美術館2F
[カレンダーの原画展]
2023年11月17日〜2023年12月25日
@文喫六本木
[個 展]
2024年2月3日(土)~2月18日(日)
@Bunkamura Gallery/渋谷ヒカリエ8F